弁理士の起業エピソード「ブライトン国際特許事務所」

起業・経営
回答いただく専門家は、技術分野における知的財産を得意とした弁理士であり、ブライトン国際特許事務所の所長 梶 俊和氏です。

Q.学生時代はどんな学生生活を過ごしましたか?

いたって普通の学生と変わりません。ロクに勉強もせずに友達と出かけたり、アルバイトに明け暮れたりする毎日でした。機械と自動車が大好きだったので、友達とよく車いじりをやっていましたし、ちょっとした改造とかメンテナンスみたいなものもよくやっていました。

一応理系でしたので研究室に配属になってからは実験漬けの毎日で夜中の2時や3時まで実験をしていた事もよくありました。下校時はフラフラで、夜中なので車通学だったんですけれども、帰りにどう運転したのか全然覚えていなくて気が付いたら家に着いていたという事も何回かありました。

Q.社会人時代はどんな企業で勤めてたんですか?

現富士フイルム株式会社です。当時は富士写真フイルム株式会社という名前でした。まだ写真がフィルムで撮影されていた頃の話です。ちなみに社名は「フィルム」ではなくて「フイルム」なんです。

そこで、現像機のメカ開発の担当をしていました。バブルの頃だったので「作れや、売れや」という時代でした。営業サイドから「早くやれ、早く対応しろ」と散々急かされていましたので、この頃もよく徹夜でCAD図面を引いていました。

ちょうど会社の近くで地域の花火大会があった時の事ですが、その時もチームのメンバー3人と上司も含めて夜中までCAD図面を引きながら「あぁ、今頃皆花火を見ているんだな」と思っていたのを思い出しています。

Q.起業した時期ときっかけは何だったんですか?

元々起業したいという意欲は強かったんですけども、何か事業を始めたい、何か世の中にインパクトのあるものを提供したいと思っていました。上から言われて仕事をコントロールされるのではなくて、自分で面白そうなものを世の中に提供したいと。しかも会社の看板ではなくて、自分の看板で社会で戦ってみたいという気持ちもありました。

でも当時バブル期でしたので、猛烈に忙しくて何も考えられずズルズルと仕事ばかりで年月が経って行きました。月80時間とか100時間とかは当たり前の残業でしたが、周りが皆そういう働き方だったので、自分だけ忙しいとは思わなかったですね。

例えば定時までデスクワークをして、社食でラーメンでも食べて、それから実験室に入ります。実験が一通り終わると夜の10時とか11時です。それからひと休憩をして実験報告書だとかのまとめに入ると、まぁ帰るのは夜中の0時とか1時になるわけです。

そうこうしているうちにユニットリーダーとかを任されるようになりまして。自分がいないとユニットが進まないと勘違いを始めて、責任からまた猛烈に仕事をするわけです。それで思考力を失って、脱サラ意欲など隅に追いやられてひたすら仕事をする事になりました。

そしたらある日会社の帰りにちょっと大きな事故に遭いまして、交通事故なんですけども。当時終電では帰れないのでわざわざ中型二輪の免許を取って400ccのバイクで片道1時間程かけて通勤していました。田舎で道も狭くて渋滞も多かったのでバイク通勤だったんですね。

その日の午前0時を過ぎた頃なんですが、対向の右折軽自動車と正面衝突をしました。平成10年の事ですからもう20年以上前の事です。私はその事故の時の記憶が全然無いんですが、実況見分所によると数十メートル飛んだという事で、結構大きな事故でした。

幸い体には骨折は無かったのですが、脳内出血が出て脳挫傷という事になりました。それでしばらく脳神経外科に入院する事になったんです。それでポッカリ時間が空いてしまって。その時に次の人生を考え始めたんですね。

一つには「自分がいないと進まない」と思っていたユニットが自分がいなくても全然進むことがわかった事と、この体調ではまた徹夜続きの仕事はちょっと出来ないなというのがありまして、それで次の人生という事で独立開業を考えました。

その中で、元々開発員だったので弁理士の特許事務所ともお付き合いがあり、理系に向いているという事と、それから頑張りようによっては高収入が見込めるという事で、弁理士を目指そうと特許事務所に転職しました。それが平成11年の事です。

Q.特許事務所に転職してから起業の流れを教えて下さい。

特許事務所に転職して勤務をしながら実務を学び、資格取得を目指しました。元々独立開業というのが念頭にありましたので、3回の受験で弁理士資格を取って、途中で1回特許事務所も転職をしたんですが、資格を取ってから約1年半で独立開業という事にしました。

経験不足というのは自分でもわかっていたんですが、経験不足を補うと言い始めるといつまでたっても独立できないので、一歩足を踏み出すという事にしました。それが平成16年です。

Q.起業は一人でしましたか?

起業は一人でしました。当時は弁理士の知り合いもほとんどいませんでしたし、誰かと一緒にやろうという発想は無かったですね。自分も含めてなんですが、弁理士は変わった人が多いので(笑)

同期合格の友人と情報共有というか一緒に協力しよう、助け合おうという事はやっていましたが、基本的にはそれぞれの事務所で頑張っていました。

最初は自宅から始めましたが、やはり来客対応が難しいという事ですぐにオフィスを探しました。ガランとしたオフィスで什器も何も無くて、テーブルとノートパソコンとプリンターだけでポツンと仕事をしていたのを今でも覚えています。

Q.起業時の資金はどれくらい準備しましたか?

当初は借入れはしなかったです。実は特許事務所の開業には、それほど原資は必要ないんですね。運転資金はもちろん必要なんですけども、仕入れというものが無いので、机とパソコンとプリンター、あとネット回線さえあれば基本的には仕事が始められます。

そうはいってもしばらくは仕事が来るアテもないので、ある程度の蓄えが無いと生活が成り立たないという怖さもありました。まぁでも幸いというか、交通事故の損害賠償金がそれなりに入ってきたというのもあって、それが当面の運転資金という事になりました。

Q.起業して軌道に乗るまでは苦労をされましたか?

起業した最初は割と順調でした。独立した頃はクライアントのアテなんか全然無くて、自分の古巣の会社は少しは仕事をくれるという風に期待していたんですけども、それは全然甘くて仕事をもらえなかったですね。

ただ、幸い会社時代にお付き合いのあった取引先さんから別の大手企業さんの知財を紹介していただいて、そこからの調査のご依頼というのが割と継続的にいただけましたので、最初の頃は割とすぐに売上が立ったという事です。

その大手企業さんからの仕事を任されるようになってからですが、その後は結構山あり谷ありで社会の厳しさを味わう事になりました。新規顧客の獲得もあったんですけが、既存顧客からの契約打ち切りだとか、顧客の倒産による売上の不良債権化などです。

事業承継の成功も失敗もしましたし、弁理士としてはかなりその手の経験は豊富な方だと思います。例えば1週間後に支払いをどうしてもしなければいけないので、融資先を必死に走り回った事もあります。

ただその事業において何よりも大切なのは、やはり人だと思います。良い人材に巡り合えなければなかなか事業が上手くいきませんが、良い人材と巡り会えれば事業は順調に伸びるものだと思います。

Q.現在のビジネスモデルは起業当初と同じですか?

現時点でも対特許庁業務がメインという意味では起業当初とビジネスモデルはそう大きくは変わっていないという状況です。

多くの弁理士がそうであるように、やはり特許出願や商標登録出願などの出願代理業務が弊所の業務の大半を占めています。もちろん得意分野は私も社員もそれぞれ持っていますので、事務所全体としては様々な技術分野だとか、特許・実用(新案)・意匠・商標全てに対応していますし、外国代理人と共同して外国からの日本への出願、日本の出願人の外国への出願にも対応しています。

ただ私は元々メーカーで商品開発部隊にいた事もあって、やはり個人的には今のままのビジネスモデルではなくて、知財の新規商品開発が必須だと思っています。知的財産というものが以前よりも随分認知度が上がって新聞やニュースでも目にする事が結構増えています。

そんな中顧客のニーズも多様化しているので、他の業界でも同じだと思いますが、顧客のニーズにマッチした新しい商品サービスを開発していかないといけないという風に思っております。弊所でも今新規の知財サービスの開発というのをやっている所ですが、今の所はちょっとまだ具体的にお話しできる状況にはなっていません。

Q. 新たな夢や目標はありますか?

やはり知財というのはお客さんの事業を下支えする縁の下の力持ちという部分がありますので、とりわけ成長過程にあるベンチャーさんの知財保護を十分に行って、そのベンチャーさんが大きく羽ばたいていく事にご協力するというのが弊所の非常に大きな夢の一つです。出来れば何か一つ大きなインパクトを与えるような知財関係の案件に少しでも関与したいというのも夢としてはあります。

Q.最後にユーザーに向けて自己PRがあればお願いします。

事業を行う上で知財というのは非常に、皆さんが思っているよりも重要です。
任意保険に入らずに車を運転する人がいないように、事業を行う場合には必ず知財の保護なしにはリスクを低減させる事が出来ません。

私達ブライトン国際特許事務所は、高いプロ意識と専門性を持って、小回りの利く知財サービスをご提供いたしておりますので、何かお困りごと等ありましたら知財に関しては我々にご連絡いただければと思います。